マレーシアBPO退職のリアル

海外移住とBPO就職の現実

まず、マレーシア転職と調べた際に、なぜ必ずと言っていいほどBPO企業のことが出てくのか?
これは、マレーシア政府がIT産業・サービス産業を国家戦略として推進しており、MSCステータス(特区認定)を持つエリアにBPO企業を誘致してきました。
クアラルンプールやサイバージャヤ、ペナンなどには、外資系BPO企業が集中しています。
BPO企業は、クライアントごとにプロジェクトが存在し、クライアントの求める結果を出すことが最大の任務です。
忙しいプロジェクトもあるし、のんびりしているところもあります。こればかりは入ってみないとわかりません。

私の配属先は、数字を追わなくてはいけないのに、どこかのんびりしている雰囲気でした。
しかしそれは、のんびりというより、みんなのやる気が低下していていたようにも感じます。

「海外で働きたい」「新しい場所で人生をやり直したい」——40代でそう考える女性は少なくありません。
実際私のそうでしたからね。

特にマレーシアは、日本人が働きやすい環境・比較的低い生活コスト・英語を使える職場が揃っており、移住先として人気があります。
その入口としてよく選ばれるのが、BPO(Business Process Outsourcing)と呼ばれる外資系のカスタマーサポート企業です。

実際は、現地採用のお仕事はBPOはそこまで大きなシェアを占めておりません。
製造業や営業、ファイナンス系、マーケティングにHR、こういったお仕事も多いです。
しかしこれらの職種に就くには、これまでのキャリアがとても重視されます。
シニアレベルでのポジションも多く、未経験では難しいです。

そこで高所になるのがBPO企業でのカスタマーサポートなわけです。
BPO企業に就職すると、英語や日本語を活かしながら国際的な環境で働くことができ、現地での生活基盤をつくる最初の一歩になります。
未経験や新卒でもチャンスがあります。また給与も比較的高め。
渡航前は「海外でキャリアを積める」「新しい出会いがある」「将来の可能性が広がる」と希望いっぱいで、採用通知を受け取った瞬間に大きな安心感を得たのを覚えています。

しかし現実には、良い面だけではありません。
まぁこれは、日本国内での転職、就職でも同じですが、次のような点が挙げられます。

  • シフト制勤務で生活リズムが不規則になりやすい
  • 給与は現地水準では高めでも、日本での収入と比べると差を感じることもある(日本で管理職などやっていた場合)
  • ビザや契約に縛られるため、自由に辞められない仕組みがある(ビザなしに就労はできません)

こうした「想定外の壁」に直面する人は少なくありません。
しかも困ったことに、こればかりは体験してみないことにはわからないものです。
特に40代での移住は、若いころの留学やワーホリと違い、生活費・家族・健康・将来設計といった現実的な課題も同時に抱えることになります。

つまり、海外移住とBPO就職は人生を大きく変えるきっかけになる一方で、「辞めたくなったときにどうするか」までを考えておくことが必要です

私が退職を決めた二つの理由

私は日本のBPO企業で約7年半ほど就業し、3つのプロジェクトに携わりました。
世界的に名高い大手で就業できる経験はそうそうないので、これはBPOの良い点と言えます。
最後に就業していた企業は、世界トップの製薬企業で、東京タワーを間近に眺めながら3年ほど就業しました。
なかなかできる経験ではありません。本当に良かったと思っています。

日本でそんなに長くBPOにいたのに、私がなぜたった10か月で大金を払ってまで退職を決めたのか?
これには大きく2つの理由があります。

理由1 プロジェクト顧客層とのミスマッチ

私はジュエリー販売や輸入車ショールームなどで10年ほど就業していました。
そこにいらっしゃるお客様は、ブランドの「ファン」なわけです。
だからクレームがあったとしても、それはそのブランドに期待している価値と見合わなかったり、違うから言うわけで、こちらとしても貴重な意見として受け入れ改善していく必要があります。

また、最後に就業していた製薬企業では、来社する方は医師や学会の方、政治家、官公庁関連の方など、企業との関係を築いていこうとしている人たちなわけで、そこには信頼関係が成り立っています。

ところがどっこい!私がマレーシアで最初に就業したBPOプロジェクトの顧客層は真逆でした。
旅行予約サイトのカスタマーサポートです。
初めに言っておきたいのですが、旅行代理店ではないのです。予約サイトはプラットフォームであり、ある程度のサポートはしますが、代理店ではないので、何でもかんでもやりません。
そして、顧客は、いかに安く宿泊できるか?ばかりにフォーカスしています。
ここが大きな違いなわけです。

わかりやすい例を出します。

顧客は、返金不可のプランを予約しました。返金不可のプランは、無料キャンセル期間が付いているものより安いのです。
しかし、体調不良、予約間違い、その他事情で行けなくなってしまいました。キャンセルしたいです。
この場合は、社会情勢等ではなく、顧客の都合の場合です。
日にち間違いはよくありますが、はっきり言って自分の不注意です。

宿泊施設は、予約が入っている時点で部屋を確保しますので、他の人は予約できないわけです。
そのため、キャンセルポリシーというものが設けられています。
このポリシー外で無料キャンセルを、当たり前かのように申し出る人は非常に多く、宿泊施設が同意しなければ返金はされません。それをカスタマーサポートに怒りぶちまけ祭りです!!

そういう方達がいるのはわかります。
しかし私はあまりにもこれまでと顧客層が真逆すぎて、自分は一体何をやっているのだろう?と自分自身に疑問を持つようになってしまったので、これはよくないと思ったのが理由1です。

理由2 時間は有限、ペナルティに縛られて時間を売るのは違うと思った

20代の時は、時間が永遠にあるように感じていませんでしたか?
でも40代ともなると違います。
ご高齢の方がせっかちになるのって、もしかしたらこれなんじゃないのかな?ってたまに思います。
自分の人生の終わりから逆算を自然としているのではないだろうか?と。

ちょっと話はずれましたが、私は42歳で入社しビザは2年。
もし満了して転職するときには44歳か45歳になっています。
日本では年齢を求人票に記載するのは現在NGなはずなのですが、マレーシアの求人には、はっきりと求める年齢層が書かれています。
そして45歳くらいまで、という表示をよく見ます。
実際、エージェントに聞いてみましたが、管理職で海外キャリアが長い方であれば50代以降も採用歴があるそうです。
外国人には当てはまりませんが、マレーシアの定年退職は60歳なので、そう考えると納得できます。

ちょっと補足ですが、今45歳以上の方でも安心してくださいね。
私の一番仲良くしている女性は50代半ばですが元気に頑張っていますし、そういう方もたくさんいます。
ただし、チャンスが減るのは残念ながら事実です。

となると私は、「毎日行きたくな〜い!」という思いを後一年半も続け、満了したときには新しいチャンスに辿り着ける機会が減っている可能性があるわけです。

マレーシア転職する日本人が多くなってきたこともあってか、以前に比べてすんなり入れなくなってきている気がします。特に、日本語カスタマーサポートであっても、英語ゼロではかなり厳しく、BPO企業ではアセスメントのボリュームも多いです。面接は基本英語です。
日本語だけで応募&面接できる案件もあるのですが、はっきり言って超限られているため、それが合わなかったら他はありません。

この一年で急激に状況は変化しているので、2年後なんて言ったらわかりませんよね。

「辞めるときのこと」までは考えない人が多い

ここまで色々お伝えしてきましたが、マレーシア転職には夢と希望が詰まっています。
私は、マレーシア転職のことを知ってからリサーチし始め、視察に行きました。
その際に感じたのは「街や国の活気が自分の明るい未来を想像させてくれる。背中を押してくれる気がする。」でした。

今実際住んでみても、それは本当によく感じています。
無職になりましたし、貯金もほぼ無し。
でもなんか平気な感じがするのです。これ本当に不思議です。私以外の人もよく言っているので、心のゆとりができるのだと思います。
日本では、毎日何かに追われ、常に不安でいっぱいでした。

そんなこともあり、夢と希望を持って大きな決断をして渡航したわけです。
もちろん、仕事は合わないかもしれない、早期退職にはペナルティがあると聞いている、離職率も高そう。
だけどまずはやってみようじゃないか!という思いの方が強いのです。
だから、辞めたときにそうなるか?なんてことは考えていないし、知らない国でのことなんかわからないわけです。

けれども、実際に働き始めると「思っていたより合わなかった」「体調がついていかない」「別のチャンスを掴みたい」など、辞めたい理由が出てくるのも自然なことです。

そこで初めて突き当たるのが、退職時に発生するペナルティ(Hiring Cost) です。
日本での転職ではあまり馴染みがない仕組みなので、実際に請求額を知ったときに驚く人も少なくありません。

私自身も、夢と希望を胸にマレーシアに渡った時点では「辞めるときにいくらかかるのか」なんてまったく考えていませんでした。
けれども、実際に退職を決めた瞬間に「契約書にはXXXと書かれているけれど、実際はどうなのだろう?」と現実に直面することになったのです。
なぜかというと、確かに契約書に記載はあったのですが、人によって金額が違うというのも聞いたことがあったからです。

マレーシアBPO企業の退職ペナルティとは?

ペナルティというとなんだかあまり良いイメージが湧きませんが、要は私たちが渡航するにあたり会社が負担してくれた費用を返還するということです。
契約を満了すればもちろん問題ありませんが、契約を満了できない=契約違反なので、違約金と思ったらフェアに感じませんか?
私は実際に明細をもらったときにHiring Costと書かれていました。
つまり雇用にかかった費用ということです。

どんな場合にペナルティが発生するのか

マレーシアBPO企業でペナルティが発生するのは主に次のような時です。

  • 契約期間(VISAの有効期限)よりも早期に自己都合で退職する時
  • 定められた退職通知期間を守らずに自己都合で退職した時

プロジェクトの閉鎖や、成績が思わしくなく解雇となった場合で支払った事例は聞いたことがありません。
あくまでも自己都合の場合です。

「定められた退職通知期間を守らずに自己都合で退職した時」というのが少しわかりにくいかもしれませんので補足します。
通常、退職を決めてから会社に通知する際には、Notice Period(ノーティスピリオド)というものが定められており、転職時にもNotice Periodはどのくらいですか?と必ず聞かれます。
これは、退職します、と上司または担当者に正式に伝えて手続きを開始してから退職するまでの期間を表します。
BPOの場合、2ヶ月が多いですが、私の会社は3ヶ月でした。

実は、早期退職のペナルティだけ気にしていれば良いのではなく、このNotice Periodの期間も満了しないと違約金が発生しますので注意が必要です。

例)Notice Period2ヶ月の場合

退職したい日:12月31日
会社に通知しないといけない日:10月31日
もしこれで2ヶ月待てない!と言って11月1日に辞めたとします。
その場合、社員は会社に二ヶ月分の給与を支払う必要があります。

・あなたの給与/10,000MYR(約35万円)であれば、なんと70万円近くも払うわけです。きょえ〜!

逆に、会社側も同様で、なんらからの事情で二ヶ月前通知なのに1ヶ月で退職してもらわないといけなくなった場合は、残りの一ヶ月分を支払う必要があります。
日本では考えられませんが、これくらい厳しく契約は決められています。

実体験レポート|私が支払った退職ペナルティの金額

さてさてみなさまお待ちかね!実際私がいくら支払ったのか気になるでしょう?
では実録大公開です!

退職時に請求された総額一覧(1MYR=35JPY計算)

説明金額(RM)円換算(約)
MDECとビザ料金4,089.00約143,115円
採用コスト1,800.00約63,000円
トレーニング1,000.00約35,000円
フライト1,310.94約45,883円
宿泊施設2,256.80約78,988円
支払総額10,456.74約366,000円

上記がHRよりもらった明細です。
しかし契約書にはUp to 10,000 MYRまでしか請求しないということが書かれていたため、実際に私が支払ったのは10,000MYRです。

採用コストやトレーニング代のことはよくわかりませんが、転職エージェントに支払う手数料とか、求人サイトに掲載する費用などと私は考えています。

VISA代が相場より1,000MYRほど高いように感じたため、エージェント代が含まれていないか確認したく、こちらも明細をいただきました。VISAに関する内訳は次の通りです。

VISA関連(MDECとビザ料金)の内訳

項目金額(RM)円換算(約)区分
Employment Pass Processing1,200約42,000円代行費用
Visa Endorsement50約1,750円代行費用
Stamping Service50約1,750円代行費用
Immigration Fees525約18,375円公式費用
MDEC Fee2,160約75,600円公式費用
合計3,985約139,475円

予想通り、代行費用が1,300MYRありますので、私の読みは正しかったです。
大きな企業でたくさんの外国人を雇用しているので、代行費用がかかるのは仕方ないですね。

マレーシアBPO退職ペナルティの金額と心得

ここまでお読みいただき、背中を押されるどころか尻込みしてしまった方もいるかもしれません。
しかしよく考えてみてください。
退職しないに越したことはないのですが、やはりこればかりは入ってみないことには分かりません。

また、私たちは外国人として働くわけなので、それなりに最悪のシナリオも考えておくのは40代であれば最低限の自分への責任とも言えます。

私は今回、一応減額交渉や、他プロジェクトの異動なども話し合いの場を設けていただきましたが、残念ながら行為に至らなかったので退職を決意しました。後悔は一つもありません。
よく考えてみてください。まず、40代に突入し、海外で働けるチャンスってそうそうないわけです。
そしてもし、自分でチャンスを掴んだとしても、渡航には費用が伴います。
私は、ペナルティではなく、会社が渡航費用を前払いしてくれた、チャンスをくれたと捉えています。
だから返還するのは当然で、そもそもペナルティだの罰金だの、そういう言葉自体が違う気がします。

実際、そう思っている人は文句を言いながらも辞めてないです 笑

自分に合う仕事が見つかれば本当にそれは嬉しいことです。
でも私は、日本でモヤモヤ毎日不安と焦りに追われて過ごしていたより全然良かったと感じています。
これはやってみたからわかったことであって、今回の10,000MYRは勉強代の一つであるとも言えます。

現在求職中ですが残念ながら、なかなか巡り会えていません。
不安じゃないですか?という声が聞こえてきそうですが、そりゃ色々考えることはありますし、不安もあります。
でも不思議と前向きになれるのは、ここにいるおかげだと思っています。

私が今日ここに書いたのは、ただの数字です。
これに捉われないでほしいのと、この詳細がわからないからビクビクしている人が多かったんじゃないかなと思っています。参考になれば嬉しいです。

最後に超大事なこと!退職後会社の保険は使えない

会社を退職すると、当然ながら 会社が加入してくれていた医療保険は失効します。
日本のように、退職したらすぐに国保に入って〜、なんてことはありません。

これは多くの方が見落としがちなポイントで、実際に私も「退職した瞬間から、もし病気やケガをしたら全額自己負担になるんだ」と気づいてヒヤリとしました。
会社の保険でもちょっと心配だったりするので、個人で入るのは海外生活では必須です。
ケチケチするところではありません。

マレーシア公立の病院では医療費は安いですが時間もかかるし、外国人はほとんど行きません。
私立病院で治療を受けるとかなりの金額になりますが、これが一般的です。
入院時などは、どの保険に入っているかを必ず聞かれますし、払えないことがわかっていればどんなに重症でも入れてもらえません。
さらに退職後すぐに次の仕事が決まるとは限りません。その空白期間、無保険で過ごすのはとてもリスクが高すぎます。

私は退職前からSafetyWing(セーフティウィング)という保険に入っています。
これはデジタルノマドや海外移住者に人気の「海外医療保険」で、月額の安さが魅力的で、世界どこでも利用可能です。
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